生前贈与の基本|110万円の非課税と贈与が成立する条件を税理士が解説
贈与税がかからない範囲で渡していても、贈与として成立していなければ意味がありません。金額よりも先に決まるのは、贈与が成り立っているかどうかです。
こんにちは。杉本税理士事務所の杉本周吾です。流山市・柏市を中心に、相続税の申告と生前の対策をお手伝いしています。
生前贈与のご相談で最初に出てくるのが「毎年110万円までなら大丈夫ですよね」という確認です。金額の理解は合っていても、渡し方で結論が変わることがあります。
この記事では、暦年課税による生前贈与の基本を整理します。贈与を始める前に押さえておきたい最低限の部分です。
生前贈与の基本の結論
- 贈与は契約です。渡す側の意思表示と、受け取る側の承諾がそろって成立します。
- 1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。
- 生活費や教育費は、必要な都度直接それに充てる分であれば贈与税がかかりません。
目次
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贈与は契約として成立させる
民法では、贈与は当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生じると定められています(民法第549条)。
渡す側が一方的に相手名義の口座へ入金しただけでは、受け取る側が知らない以上、受諾がありません。この状態では贈与が成立していないため、そのお金は渡した側の財産のままと見られます。
書面は成立の条件ではありません。ただし、書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができるとされています。履行の終わった部分についてはこの限りではありません(民法第550条)。贈与契約書を作り、振込で記録を残しておけば、いつ誰から誰へ渡したのかを後から示せます。
1年110万円の基礎控除
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によってもらった財産の価額を合計し、そこから基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に税率を乗じて計算します(国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。
合計額が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も必要ありません。この110万円は、もらう側ひとりにつき1年あたりの枠です。
110万円を超えた部分にかかる税率は、直系尊属から18歳以上の子や孫へ贈与する場合に使う特例税率と、それ以外の一般税率に分かれます。いずれも10パーセントから55パーセントまでの8段階で、速算表は国税庁のページに掲載されています。
ここで1つ注意があります。亡くなる前の一定期間に行われた贈与は、110万円以下であっても相続税の計算上、相続財産に足し戻されるルールがあります。加算される期間は相続が始まった日によって変わります。詳しくは生前贈与の7年ルールはいつから?2027年の相続から変わる加算期間で解説しています。
贈与税の申告と納税
1年間にもらった財産の合計が110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要です。申告と納税をするのは、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日までの間です(国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。
手続きをするのは、渡した側ではなく受け取った側です。提出先は、贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署になります。
生活費や教育費の都度贈与
夫婦や親子などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかかりません(国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。
ただし、この非課税は、生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるためのものに限られます。生活費や教育費の名目で受け取っても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかります。
仕送りや学費の支払いは、その都度必要な額を渡すのが原則です。まとめて渡して手元に置いておくと、扱いが変わる可能性があります。
生前贈与のよくある質問
Q1. 110万円以内なら、申告も記録も要らないのですか
A. 申告は不要ですが、記録は残しておくことをおすすめします。1年間に受け取った財産の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も必要ありません。ただし相続のときに贈与だったと説明できないと、贈与と認められないことがあります。
Q2. 贈与契約書は必ず作らないといけませんか
A. 法律上、書面は贈与の成立条件ではありません。ただし民法では、書面によらない贈与は各当事者が解除できる(履行の終わった部分を除く)とされています。後から説明できる形にする意味でも、契約書と振込の記録を残しておくほうが確実です。
Q3. 子どもの生活費を毎月送っています。これも贈与税の対象ですか
A. 扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかかりません。ただし必要な都度、直接これらに充てる分に限られます。送った額を使わずに預金や投資に回している場合は扱いが変わります。
税理士に相談したほうがよい場面
贈与には、暦年課税のほかに相続時精算課税という課税方法があり、住宅取得等資金や教育資金などの非課税制度もあります。どれを使うかで結果が変わるため、次のような場合は実行する前にご相談ください。
- まとまった額を一度に渡したい
- 住宅の購入資金や教育資金として渡したい
- 相続まで含めた全体でどう渡すのが良いか決めかねている
- 過去に渡した分の記録が残っておらず、整理したい
相続や贈与には、税理士以外の専門家が扱う領域もあります。不動産の名義変更(登記)は司法書士、遺産分割で争いになっている場合は弁護士の領域です。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成は、当事務所が窓口となり提携の行政書士と連携して進めます。贈与税や相続税の申告、財産評価は税理士が担当します。
相続全体の考え方は二次相続まで考えた一次相続の分け方もあわせてご覧ください。当事務所の相続・資産税の対応内容は相続・資産税|杉本税理士事務所にまとめています。
生前贈与の基本のまとめ
生前贈与で押さえる順番は、まず贈与が成立しているか、次に金額、最後に申告の要否です。110万円という数字は3番目の話で、そこから入ると形が崩れます。
この記事は贈与シリーズの1本目です。今後、相続財産への足し戻し、住宅資金などの特例、相続時精算課税の順に扱っていく予定です。
初回のご相談は無料です。お電話(050-5574-2492/受付 平日9:00〜17:00、土日は応相談)、または杉本税理士事務所のお問い合わせフォームからご連絡ください。フォームのお問い合わせ種別は「個人向け(相続・遺言・確定申告)」をお選びください。
事務所は千葉県流山市南流山にあり、つくばエクスプレスと武蔵野線の南流山駅から徒歩圏です。流山市・柏市・松戸市を中心に、東武アーバンパークライン沿線、埼玉県三郷市・吉川市からのご相談にも対応しています。オンライン(Google Meet)でのご相談も可能です。
参考URL
- 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- 国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
- e-Gov法令検索「民法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
執筆:杉本周吾(税理士・杉本税理士事務所 代表)
税理士法人の役員を経て独立。実務経験27年、MBA取得。千葉県流山市南流山を拠点に、相続税の申告、財産評価、生前の相続対策に対応しています。
この記事は2026年10月時点の情報です。


