二次相続まで考えた一次相続の分け方は?配偶者に全部渡すと損をする理由

一次相続で配偶者がすべてを相続すれば、そのときの相続税は0円にできます。ただし、その分け方が家族全体で見ると最も重い負担になることがあります。

こんにちは。杉本税理士事務所の杉本周吾です。流山市・柏市を中心に、相続税の申告と生前の対策をお手伝いしています。

「配偶者が全部相続しておけば安心」と考えて一次相続の分け方を決めた結果、次の相続でお子さんが驚く金額の相続税を納めることになった。そうした場面に何度も立ち会ってきました。

この記事では、一次相続の分け方が二次相続の負担にどう影響するのかを、国税庁が公表している情報にもとづいて整理します。

二次相続の分け方の結論

  • 二次相続では法定相続人が1人減るため、基礎控除も生命保険の非課税枠も小さくなり、配偶者の税額軽減も使えません。
  • 一次相続で配偶者に財産を寄せるほど、二次相続で課税される財産が増えます。一次と二次を合計して考える必要があります。
  • 分け方を決める前に、残された配偶者の生活資金と住まいが確保できるかを先に確認します。税額の比較はその後です。

目次

この記事は約4,300字です。読み終わるまでの目安は8分ほどです。

二次相続で相続税が重くなる4つの理由

この章の要点:基礎控除、生命保険の非課税枠、配偶者の税額軽減、配偶者自身の財産。二次相続では、この4つが一次相続と変わります。

両親のうち先に亡くなった方の相続を一次相続、残された配偶者が亡くなったときの相続を二次相続と呼びます。同じ財産でも、二次相続のほうが税負担は重くなりやすい仕組みです。理由は4つあります。

基礎控除が600万円小さくなる

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(国税庁「No.4152 相続税の計算」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

両親と子2人の家庭なら、一次相続の法定相続人は3人、二次相続は2人です。1人減るため、基礎控除は600万円小さくなります。

生命保険の非課税枠が500万円小さくなる

死亡保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」です(国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」2025年(令和7年)4月1日現在法令等)。

こちらも相続人が1人減ることで、非課税の枠が500万円小さくなります。

配偶者の税額軽減が使えない

配偶者の税額軽減は、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税がかからないという制度です(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

二次相続では配偶者がいないため、この制度を使う余地がありません。一次相続で軽減を使い切るほど、二次相続に回る財産が増えることになります。

配偶者自身の財産が合算される

二次相続で課税されるのは、一次相続で配偶者が取得した財産に、配偶者がもともと持っていた財産を足したものです。

相続税は、基礎控除を引いた後の課税遺産総額を法定相続分で按分した金額に税率を適用します。税率は10パーセントから55パーセントまでの8段階です(国税庁「No.4155 相続税の税率」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

課税される財産が増えれば、適用される税率も上がります。

項目一次相続(相続人3人の場合)二次相続(相続人2人の場合)
基礎控除4,800万円4,200万円
生命保険の非課税枠1,500万円1,000万円
配偶者の税額軽減使える使えない
課税対象になる財産亡くなった方の財産一次相続で取得した財産+配偶者自身の財産

一次相続の分け方を決める前の確認順序

この章の要点:税額の比較より先に、配偶者の生活資金と住まいを確認します。順番を逆にすると、選べる道が狭くなります。

二次相続の話になると、どうしても「合計の税額が最も少なくなる割合はどこか」という計算から入りがちです。私はその前に確認することがあります。残された配偶者が、安心して生活を続けられるかどうかです。住む場所と生活資金が整っていてこそ、次の話ができると考えているからです。

順番としては次のとおりです。

一次相続の分け方を決めるときの3つのステップと分岐を示した図 ステップ1 配偶者の生活資金と住まいを確認する 足りていない 配偶者の取得分を優先して確保 足りている ステップ2へ進む ステップ2 財産の性質で振り分ける 値上がりや収益が見込まれる財産 子が取得する選択肢を検討 生活に必要な現預金や自宅 配偶者の取得を検討 ステップ3 一次と二次の合計で複数の案を比べる

どの分け方が有利になるかは、財産の内訳、配偶者がもともと持っている財産の額、相続人がどこに住んでいるかなどで変わります。

一般論として「この割合がよい」と決め打ちできるものではありません。杉本税理士事務所では、ご家族の事情を伺ったうえで複数の案を試算しています(相続・資産税の対応内容)。

一次相続の分け方を考えるときに集めておく5つの情報のチェックリスト 分け方を考える前に集めておく情報 財産の一覧(不動産、預貯金、有価証券) 生命保険の契約内容と受取人 配偶者自身の名義になっている財産 自宅に今誰が住んでいて、今後誰が住む見込みか 一次相続の申告書の控え(二次相続を考える場合)

二次相続の分け方で使える2つの制度

この章の要点:配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例。どちらも、二次相続では使える条件が変わります。

分け方を考えるときに関わってくる制度を2つ挙げます。

配偶者の税額軽減は前述のとおりです。注意点として、この軽減の対象となる財産には、隠蔽または仮装されていた財産は含まれません(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

小規模宅地等の特例は、被相続人等が住んでいた宅地などについて、相続税の課税価格に算入する価額を減額する制度です。特定居住用宅地等に該当する場合、限度面積は330平方メートル、減額される割合は80パーセントです(国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。配偶者が取得する場合は取得者ごとの要件がありませんが、被相続人と同居していた親族が取得する場合は、相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、その宅地等を申告期限まで持っていることが要件になります。

二次相続では配偶者がいないため、自宅の宅地についてこの特例を使えるかどうかは、取得する子が要件を満たすかどうかで決まります。一次相続の時点で誰が自宅を取得するかを考えるときの材料になります。

二次相続の分け方と申告期限の関係

この章の要点:申告期限は10か月。分け方が決まらないままだと、配偶者の税額軽減が使えなくなる場合があります。

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行います(国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限になります。

分け方が決まらないまま期限を迎えると、配偶者の税額軽減に影響します。この軽減は配偶者が実際に取得した財産をもとに計算するため、申告期限までに分割されていない財産は対象になりません。ただし、相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したうえで、申告期限から3年以内に分割したときは対象になります。申告後の分割で軽減を受ける場合は、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求という手続きが必要です(いずれも国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

相続開始から申告期限10か月、分割の期限3年、更正の請求4か月までの時間の流れを示した数直線 死亡を知った日 の翌日 10か月 申告と納税の期限 未分割なら分割見込書を添付 申告期限から3年 ここまでに分割すれば 配偶者の税額軽減の対象 分割の日から 4か月 更正の請求

二次相続が10年以内なら相次相続控除

この章の要点:一次相続から10年以内に二次相続が起きた場合、相続税額から一定額を差し引ける制度があります。

一次相続から間もないうちに二次相続が起きた場合に使える制度があります。相次相続控除です。

今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続や遺贈などによって財産を取得し相続税が課されていた場合、その被相続人から財産を取得した人の相続税額から一定の金額を控除します。控除額は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10パーセントの割合で逓減した後の金額です(国税庁「No.4168 相次相続控除」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。

適用を受けられるのは被相続人の相続人に限られており、相続を放棄した人や相続権を失った人は、遺贈によって財産を取得しても対象になりません。一次相続で相続税を納めているご家庭で二次相続が起きたときは、この制度の対象になるかどうかを確認する価値があります。

二次相続の分け方のよくある質問

Q1. 配偶者が自宅だけを相続する分け方でも問題ありませんか

A. 分け方そのものに決まりはなく、相続人全員の合意で決められます。ただし自宅は二次相続でもそのまま課税対象になるため、取得する子が小規模宅地等の特例の要件を満たすかどうかで結果が変わります。自宅の評価額と、二次相続で誰が住む見込みかを合わせて検討してください。

Q2. 母に自分名義の預金があります。二次相続に影響しますか

A. 影響します。二次相続で課税されるのは、一次相続で取得した財産に配偶者自身の財産を足したものだからです。配偶者がもともと持っている財産が多いほど、一次相続で配偶者に寄せた場合の影響が大きくなります。試算の際は、配偶者自身の財産も洗い出しておくことをおすすめします。

Q3. 一次相続の分割が決まらないうちに母が亡くなりました

A. 一次相続と二次相続は別の相続として、それぞれ申告が必要です。一次相続の分割が未了のままだと配偶者の税額軽減が適用できないため、分割見込書の提出や更正の請求といった手続きの順番が重要になります。相続人の範囲も変わるので、早めに専門家に状況を整理してもらってください。

Q4. 二次相続では小規模宅地等の特例の要件が変わりますか

A. 制度そのものは同じですが、使える人が変わります。配偶者が取得する場合は取得者ごとの要件がない一方、二次相続では配偶者がいないため、同居していた親族などの要件を満たす必要があります。誰がどこに住んでいるかによって結論が変わるため、個別の確認が必要です。

Q5. 2026年10月時点で、生前贈与は何年前までさかのぼりますか

A. 被相続人の相続開始日によって異なります。相続開始日が2026年(令和8年)12月31日までは相続開始前3年以内、2027年(令和9年)1月1日から2030年(令和12年)12月31日までは2024年(令和6年)1月1日から死亡の日までの間、2031年(令和13年)1月1日以後は相続開始前7年以内です(国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」)。今は移行期にあたるため、贈与を検討する際は時期の確認が欠かせません。暦年課税による贈与の基本は生前贈与の基本|110万円の非課税と贈与が成立する条件で整理しています。

税理士に相談したほうがよい場面

次のいずれかに当てはまる場合は、分け方を決める前にご相談いただくほうが選択肢が残ります。

  • 財産の中に自宅以外の不動産や非上場株式があり、評価額の見当がつかない
  • 配偶者自身の財産が一定額あり、二次相続まで含めた見通しを立てたい
  • 一次相続の申告期限が近づいているのに分け方が固まっていない
  • 一次相続から10年以内に二次相続が発生した

一方、相続には税理士以外の専門家が扱う領域があります。不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、遺産分割で争いになっている場合や交渉が必要な場合は弁護士の領域です。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成は、当事務所が窓口となり提携の行政書士と連携して進めます。相続税の申告と財産評価は税理士が担当します。どこに何を頼めばよいか分からない段階でも、整理のお手伝いはできます。

当事務所の相続・資産税の考え方は相続・資産税|杉本税理士事務所にまとめています。

二次相続の分け方のまとめ

一次相続で配偶者の税額軽減を限界まで使えば、そのときの納税額は確かに小さくなります。ただし二次相続では、基礎控除も生命保険の非課税枠も小さくなり、配偶者自身の財産も合算されます。家族全体で見たときにどうかという視点が要ります。

そのうえで、私が一番にお伝えしたいのは、数字の前に配偶者の暮らしを確認してほしいということです。住む場所と生活資金が整って初めて、分け方の比較に意味が出てきます。節税だけを追った分け方は、残された方の生活を細くしてしまうことがあります。

二次相続まで見据えた分け方は、一次相続の遺産分割を決めるタイミングでしか設計できません。「うちはまだ早いかな」と思われる今が、選択肢がいちばん多いタイミングです。

相続の分け方は、一度決めて申告してしまうと後から戻せません。

ご相談では、財産の一覧をお持ちいただければ、一次相続と二次相続の合計でいくつかの分け方を比べた試算をお見せします。「まだ相続が起きていない」段階でも構いません。むしろその段階のほうが、選べる道が多く残っています。

初回のご相談は無料です。お電話(050-5574-2492/受付 平日9:00〜17:00)、または杉本税理士事務所のお問い合わせフォームからご連絡ください。フォームのお問い合わせ種別は「個人向け(相続・遺言・確定申告)」をお選びください。

事務所は千葉県流山市南流山にあり、つくばエクスプレスと武蔵野線の南流山駅から徒歩圏です。流山市・柏市・松戸市を中心に、東武アーバンパークライン沿線、埼玉県三郷市・吉川市からのご相談にも対応しています。ご家族が離れて暮らしている場合は、オンライン(Google Meet)でのご相談も可能です。

参考URL

  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
  • 国税庁「No.4168 相次相続控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm
  • e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/

執筆:杉本周吾(税理士・杉本税理士事務所 代表)
税理士法人の役員を経て独立。実務経験27年、MBA取得。千葉県流山市南流山を拠点に、相続税の申告、財産評価、生前の相続対策を中心に対応しています。

この記事は2026年10月時点の情報です。