孫への生前贈与は加算されない?対象になる人と加算しない4つの財産
孫に贈与した財産は、原則として相続財産に足し戻されません。加算されるかどうかは続柄ではなく、その人が相続や遺贈で財産を取得したかどうかで決まります。
こんにちは。杉本税理士事務所の杉本周吾です。流山市・柏市を中心に、相続税の申告と生前の対策をお手伝いしています。
生前贈与が相続財産に足し戻される話をすると、「では孫に渡せばいいのか」と聞かれます。考え方としては正しいのですが、例外があります。
この記事で扱うのは、暦年課税で贈与した財産の加算です。加算の対象になるのは誰か、そして加算されない財産には何があるのかを、国税庁の情報にもとづいて整理します。
生前贈与加算の対象者の結論
- 暦年課税の加算の対象になるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人です。
- 財産を取得しない孫などへの贈与は加算されません。ただし遺贈、死亡保険金や死亡退職金、代襲相続、相続時精算課税の選択という4つの場合は対象になります。
- 住宅取得等資金や教育資金など、非課税の適用を受けた金額は加算しません(教育資金は2026年3月末で新たな拠出が終了)。
目次
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加算の対象になるのは誰か
生前贈与加算の対象となるのは、相続等により財産を取得した人で、その被相続人から加算対象期間内に暦年課税に係る贈与によって財産を取得した人です(国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」2026年(令和8年)4月1日現在法令等)。
ここでいう相続等には、相続のほか遺贈や相続時精算課税に係る贈与が含まれます。逆に言えば、相続や遺贈で何も受け取らない人への贈与は、加算の対象になりません。
加算される期間そのものは、被相続人が亡くなった日によって変わります。2026年(令和8年)中の相続なら相続開始前3年以内、2027年(令和9年)から2030年(令和12年)までは2024年(令和6年)1月1日以後の贈与が対象で、2031年(令和13年)以後の相続で7年以内になります。期間の決まり方は生前贈与の7年ルールはいつから?で整理しています。
孫への贈与が対象になる場合
孫は法定相続人ではないのが通常です。そのため、相続で財産を受け取らなければ、生前に贈与を受けていても加算されません。
ただし、次のような場合は、孫も相続等により財産を取得した人に当たります。
- 遺言によって財産を受け取る場合
- 死亡保険金や死亡退職金の受取人になっている場合
- 子が先に亡くなり、代襲相続人として相続する場合(相続で財産を取得しなければ対象外)
- 相続時精算課税を選択して贈与を受けている場合
この4つは、相続の場面で実際によく出てきます。とくに保険金の受取人は、契約したときのまま見直されていないことが多く、相続が始まってから気づくケースがあります。
4つ目の相続時精算課税は、少し性質が異なります。この制度を選んで受けた贈与は、そもそも相続のときに精算する前提の制度で、相続税の計算に含まれます(2024年以後は年110万円の基礎控除部分を除く)。そのため、孫が相続で何も受け取らなくても、精算課税を選んでいればその贈与は相続税の対象です。暦年課税との違いが大きい部分なので、制度の選び方は別の記事で改めて扱います。
孫への贈与が加算されるかの判定
相続時精算課税を選んだ人は、相続で何も受け取らなくても、財産を取得したものとして扱われます。そのため、図では「取得する」の側に入れています。
加算しない4つの財産
被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要がありません。
- 贈与税の配偶者控除の適用を受けている、または受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
- 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
- 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額(2026年3月末で新たな拠出は終了)
- 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
ただし、教育資金と結婚・子育て資金については注意が必要です。贈与者が亡くなった時点で使い切っていない管理残額は、相続等により取得したものとみなして相続税の課税価格に加算される場合があります。
これらの非課税制度は、それぞれ要件や期限が異なります。制度ごとの内容は別の記事で扱う予定です。
生前贈与加算の対象者のよくある質問
Q1. 孫に毎年贈与していますが、相続のときに足し戻されますか
A. 孫が相続や遺贈で財産を取得しなければ、加算の対象になりません。加算されるのは、相続等により財産を取得した人が受けた贈与だからです。ただし遺言で財産を受け取る場合、死亡保険金や死亡退職金の受取人になっている場合、代襲相続人として相続で財産を取得する場合、相続時精算課税を選んでいる場合は取り扱いが変わります。
Q2. 子が先に亡くなり、孫が相続人になりました
A. その孫が相続で財産を取得すれば、加算の対象になります。加算の判定は続柄ではなく、相続等で財産を取得したかどうかで決まるためです。生前に贈与を受けていた分がある場合は、相続税の計算に含める必要があります。
Q3. 住宅取得等資金の非課税を使った贈与も足し戻されますか
A. 非課税の適用を受けた金額は加算しません。国税庁も、加算しない財産として住宅取得等資金のうち非課税の適用を受けた金額を挙げています。ただし非課税の枠を超えて贈与した部分は、通常の贈与として扱われます。
税理士に相談したほうがよい場面
次のような場合は、贈与を始める前に一度確認しておくことをおすすめします。
- 孫に贈与しているが、遺言や保険金の受取人の指定がどうなっているか把握していない
- 子が先に亡くなっていて、孫が相続人になる見込みがある
- 住宅資金や結婚・子育て資金の非課税制度を使うか検討している
- すでに贈与を始めていて、加算の対象になるか判断がつかない
相続には税理士以外の専門家が扱う領域もあります。不動産の名義変更(登記)は司法書士、遺産分割で争いになっている場合は弁護士の領域です。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成は、当事務所が窓口となり提携の行政書士と連携して進めます。贈与税や相続税の申告、財産評価は税理士が担当します。
贈与の基本は生前贈与の基本|110万円の非課税と贈与が成立する条件にまとめています。当事務所の相続・資産税の対応内容は相続・資産税|杉本税理士事務所をご覧ください。
生前贈与加算の対象者のまとめ
孫への贈与が加算されないのは、孫だからではありません。相続や遺贈で財産を取得しないからです。この違いを押さえておくと、遺言を書いたときや保険の受取人を変えたときに、贈与の扱いまで考えが及びます。
贈与と遺言と保険は、別々に決めてしまいがちです。ただ、相続のときには一つの計算にまとまります。渡し方を決める前に、全体を並べて見ておくことをおすすめします。
初回のご相談は無料です。お電話(050-5574-2492/受付 平日9:00〜17:00、土日は応相談)、または杉本税理士事務所のお問い合わせフォームからご連絡ください。フォームのお問い合わせ種別は「個人向け(相続・遺言・確定申告)」をお選びください。
事務所は千葉県流山市南流山にあり、つくばエクスプレスと武蔵野線の南流山駅から徒歩圏です。流山市・柏市・松戸市を中心に、東武アーバンパークライン沿線、埼玉県三郷市・吉川市からのご相談にも対応しています。オンライン(Google Meet)でのご相談も可能です。
参考URL
- 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
- 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
- e-Gov法令検索「相続税法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
執筆:杉本周吾(税理士・杉本税理士事務所 代表)
税理士法人の役員を経て独立。実務経験27年、MBA取得。千葉県流山市南流山を拠点に、相続税の申告、財産評価、生前の相続対策に対応しています。
この記事は2026年10月時点の情報です。

